令和8年度の始まりに(ご挨拶)                 校 長  大江 健規

 

  

 春の訪れとともに、新入生が新たに本校の仲間となり、在校生も一つ上の学年へと進級しました。佐井寺中学校は全校生徒521名で、令和8年度の教育活動をスタートしています。校長として三年目を迎え、子どもたちや教職員の姿、そして学校が積み重ねてきた日々の営みを、継続した時間の中で見つめながら、新たな一年を迎えています。
 さて、次期学習指導要領に向けた国の「論点整理」では、これからの学校教育の大きな方向性として、子どもたち一人ひとりが、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生の「舵をとる」ことができる力を育むことが示されています。そしてその先に、民主的で持続可能な社会の創り手を、学校だけでなく社会全体で育てていくという考え方が置かれています。
 ここでいう「舵をとる」とは、誰にも頼らず、ひとりで決断し続けることを意味するものではありません。予測の難しい時代の中で、思い通りにいかない出来事や迷いに出会ったとき、周囲の人と関わりながら、自分の考えを持ち直し、進む方向を考え続ける姿勢のことだと受け止めています。そして「民主主義」とは、制度や仕組みを知ること以上に、互いの違いに向き合い、対話を重ね、納得解を探ろうとする日常の営みそのものを指していると感じています。

佐井寺中学校では、こうした力を、特別な学習だけで育てるのではなく、日常の学校生活全体を通して育んでいきたいと考えています。授業の中で、主体的・対話的に深く学び合うこと。学級や行事の中で、意見の違いに出会い、折り合いをつけながら前に進むこと。そうした経験の積み重ねが、子どもたち一人ひとりが社会と関わりながら生きていくための土台になっていきます。
本校が大切にしているのは、子どもたちが「学ぶ」「育つ」だけでなく、互いに学び合い、育ち合う学校であることです。そこには、必ず他者の存在があります。自分とは異なる考えに触れ、自分の考えを見つめ直し、関係の中で成長していく――その過程そのものが、これからの時代に求められる力につながっていくと考えています。
 また、こうした学び合い・育ち合いの文化を支えるためには、教職員自身もまた、実践の中で学び、育ち合う存在であり続けることが欠かせません。次代を担う教員は、研修や制度だけで育つものではなく、日々の授業、子どもたちとの関係、同僚との対話や振り返りを通して育っていくものです。本校では、現場と実践を大切にしながら、教職員が互いに学び合える学校づくりを進めてまいります。

結びに、学校教育を取り巻く環境は、社会の変化とともに、今後さらに複雑さを増していくことが予想されます。しかし、公立学校である本校の使命と責任は、「一人残らず子どもの学ぶ権利を保障し、その学びを高めること」、そして「他者と共に生きる準備をする場」であるという点に変わりはありません。私は、佐井寺中学校に登校してくるすべての子どもたちを、ご家庭から単に「お預かりする」のではなく、「お引き受けする」ことから学校教育は始まると考えています。
 「引き受ける」とは、教職員一人ひとりが持つ知識や技能、専門性をもって、子どもたちの成長に積極的に関わり続けるという決意です。今年度も、本校教職員一同、佐井寺中学校の教育課程を通して、子どもたち一人ひとりの「学び」と「育ち」を、そして互いに支え合いながら歩む学校づくりを、お引き受けしてまいります。
 教育は学校だけで完結するものではありません。学校、家庭、地域がそれぞれの立場で子どもたちを見つめ、支え合うことで、子どもたちはより確かな一歩を踏み出していきます。これからも、確かめ合い、語り合いながら歩んでまいりますので、引き続き本校の教育活動へのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。